『コリエソ(街角にて)』


 実を言うとこの歌が韓国でいつ流行ったのか、僕はよく知らないのです。ハングルを習い始め、韓国映画を見ているうちに『8月のクリスマス』と言う映画に出会いました。
 病気で死ぬ運命にある主人公ジョンウォン(ハン・ソッキュ)が雨の夜、思いを寄せるタリム(シム・ウナ)を待ちながら口ずさんでいた歌が、この『コリエソ(街角にて)』であることを知ったのが7年ほど前のことです。映画が作られたのが1998年、歌が流行ったのは、当然それよりも前のことです。

 「街角の灯が一つ、二つと灯り、闇に溶けた夕焼けの向こうに、また一日が暮れて行く時、何故かすべては夢のように思える」という出だしで始まる失恋の歌です。
 でも僕は、遥か昔の、若き日を思う失恋男への共感と言うよりは、次のフレーズに出てくる「ユリエ〜 ピチンネ モスブン ムオル チャッコ インヌンジ〜、(ガラスに映る姿は、何を探しているのだろう・・・)」と言う一節が、街角を歩きながらショーウィンドウに映る自らの年齢を経た姿と重なり、何とも言えぬ哀愁を感じてしまうのです。

 歌手のキム・グァンソクは1964年生まれ、数々のヒット曲があるにも関わらず、96年に自殺をしてしまいます。亡くなってからも追慕の公演が行われたり、復刻アルバムも今年出されています。
 映画 『共同警備区域 JSA』の挿入歌「イドゥンピョンエ・ピョンジ(二等兵の手紙)」は日本でも話題に成りました。

 写真は、2000年冬、荒れた対馬海峡を渡った次の日、大雪に見舞われ足止めされたテジョン(太田)の街角です。どこへ行く当ても無く、トルソクパブ(石焼飯)を食べ、一泊しただけで帰って来たのですが、異国の街で見る雪は感傷をそそり、その夜僕は一通の手紙を書きました。(涙で文字が滲んでいたでしょうか・・・?)


テジョン(韓国、2000.1.8)

 サビの部分、「クリウン〜クデ アルンダウン モスブロ〜 マッチアムイールド オプトン ゴチョロ〜ム、( 懐かしい君、美しい姿も、すべて何も無かったように・・・)」
と叫んでから、もう6年。

 心の叫びを載せられる歌が、日本には無いような気がしていたのですが、ふと長淵剛と言う歌手が思い浮かびました。別に好きではなかったのですが、この前テレビに出ていて、「ああこういう歌手も居るのか・・・?」と思いました。
キム・グァンソクについても僕はほとんど知らないのですが、どこか重なる部分があるのかも知れません。



 またまたお隣、韓国の歌です。考えてみるとこの10年くらい、日本語で覚えた歌はほとんど無く、韓国語で覚えた歌ばかりです。
 何故か心に染み入る歌は韓国の歌です。メロディーも歌詞も抵抗無く、スーと入って来る歌が多いのはなぜでしょうか?

 ワールドカップの日韓共催が決まってから、何人もの韓国の歌手やタレントが日本で活躍し、韓流ドラマファンの御婦人の追っかけも日常化して来ました。文化面での日韓交流は、僕が韓国語を学び始めた頃からかなり進んで来たのですが、政治的な交流はまだまだの観があります。政治家もカラオケで韓国の歌を歌うようになるには、あと何年かかるのでしょうか?(説得力の無い言葉かな・・・?)

 このシリーズは地名の入った歌で構成するつもりだったのですが、地名が入っていなくても、風景とマッチするようなタイトルの歌なら構わないだろうと都合の良い判断をしました。

 ちなみに『コリエソ』の舞台がどこなのかは、良く分かりません。テジョンに因んだ歌には『テジョンブルース』と言うのがあって、結構有名なのですが(ただし古い人間の間では・・・)演歌なのであまり好きではありません。

 『8月のクリスマス』のテーマもいい曲です。これも好きだな!

 この映画の舞台はクンサン(群山)です。ここもかつて彷徨った事があります。



Yasuaki Hayashi

Kawasaki,Japan


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Last modified: Tue 17 Oct, 2006Copyright (C) 2006 Yasuaki Hayashi